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ホドロフスキー フィルモグラフィー


 
映画「ホーリー・マウンテン」と、原作のルネ・ドーマルの『類推の山』
「ホーリー・マウンテン」と「サンタ・サングレ」映画パンフレット


1968(1966?) ファンドとリス フォルナンド・アラバール原作
1970(1967?) エル・トポ
1973 ホーリー・マウンテン ルネ・ドーマル「類推の山」原作
完成せず、中途挫折 デューン フランク・ハーバート原作
1980 牙(Tusk)
次回作 エル・トポの息子



<グルジェフ思想と映画表現>

 アレハンドロ・ホドロフスキーは、ゲオルギー・イワノヴィッチ・グルジェフの思想の影響
を受けており、「ホーリー・マウンテン」の中で聖なる山を目指す役者たちを、三ヶ月間、
チリのアリカという街に住む友人のオスカー・イチャーゾに預けたという。イチャーゾは、
アリカ・システムという独自の行法を開発しており、このシステムはイスラム教のスーフィ
ー、カバラ、ヨガ、易教、禅、錬金術、グルジェフ・ワークをもとにした行法である。
 「ホーリー・マウンテン」の原作となった『類推の山』を書いたルネ・ドーマルは、シュル
レアリストであったが、アンドレ・ブルトン一派とは一線を画し、「大いなる賭け」というグ
ループを形成していた。ドーマルは、超越的なものへの関心が高く、グルジェフに傾倒
し、自身で透視実験を行ったりした。『類推の山』は、世界の至高点をめざす8人の男女
を描いた形而上的な登山小説である。(日本では澁澤龍彦が愛した小説ということでも
名高い。)
 グルジェフの著作をダイレクトに表現したという点では、ピーター・ブルック監督による
「注目すべき人々との出会い」がある。



◆ゲオルギー・イワノヴィッチ・グルジェフ(1877?〜1949)
 1877年(一説によると1872年)アルメニアのアレキサンドロポル生まれの神秘思想
家。彼は魔術師・催眠術師と呼ばれる時期があったが、自身が銃撃戦で負傷したことを
契機に、自己満足的な魔術的能力を放棄し、人間の内なる可能性を発現させるために
生きようと決心し、「人間の調和的発展協会」を設立する。
 主要著作に、(1)『ベルゼブブの孫への話』(平河出版社)、(2)『注目すべき人々との
出会い』(めるくまーる社)、(3)『生は<私が存在し>初めて真実となる』(平河出版社)が
あり、(1)は<機械>と化した人間にショックを与え、誤った既成概念を根底から叩き壊
し、(2)新しい人格の創造のための土台を提供し、(3)存在論に基ずく、新しい宇宙像と
人生観を提示することに主眼が置かれている。
 彼の思想は、P・D・ウスペンスキー、J・G・ベネット、ジャンヌ・ド・ザルツマンらの弟子
たちはもとより、建築家のフランク・ロイド、作家のキャサリン・マンスフィールド、画家の
ジュージア・オキーフ、音楽のキース・ジャレット、ロバート・フィリップらに影響を与え、今
日のトランスパーソナル心理学のバックボーンのひとつにもなっている。

◆グルジェフの思想
 グルジェフ思想の見取り図を得るには、P・D・ウスペンスキー『奇蹟を求めて』(平河出
版社)、K・R・スピース『グルジェフ・ワーク』(平河出版社)を読むのが一番良く、最近で
はP・D・ウスペンスキーを主人公にして、ミステリー仕立てでグルジェフの実像に迫る小
森健太朗『Gの残影』(文藝春秋)といった著作すら存在している。
 ここでは、グルジェフ思想の最重要箇所を提示しておこう。
(1)グルジェフは、紀元前2500年、バビロニアで設立されたサルムング教団の教えを
軸に、グルジェフ・ワークといわれる独自の修行法と聖体操を作り上げた。彼のシステム
には、ギリシア正教・イスラム教・ゾロアスター教・ヒンドゥー教・土俗シャーマニズムなど
の伝統が息づいている。
(2)グルジェフは、通常の人間は牢獄にいるようなもので、自由はなく、さまざまな規則
にがんじからめになった自由意志を持たない<機械>であるとみなす。グルジェフは、
自分が望んでいるように行動ししたり、思考したり、感情を抱いたりしているのではなく、
すべて起こるにまかせているに過ぎないという。
そして、分別のある人間ならば、<機械>であることを止め、牢獄から脱出することを考
えると説く。この際、すでに牢獄を出た人間がいること、また牢獄を出ようとする人間が
互いに協力すれば、それだけ脱出の可能性が高まるという。
(3)<機械>であることを止めるためには、自己を見つめることが大切である。
  グルジェフは、各人には複数の<私>が隠れているといい、自己同一性を幻想とみな
す。そして、人間は、<食物工場>のビルディングのように、3Fに知性センター、2Fに
感情センター、1Fに動作センター、本能センター、性センターがあるが、通常の人間は
これらのセンターの働きが非能率で、交互の調和が欠如しており、互いに他のセンター
のエネルギーを盗用し、エネルギーを無駄に放出しているという。
 バランスを欠いた人間は、どこのセンターに重心があるかによって、人間第一番(運
動・本能の人間)、人間第二番(感情の人間)、人間第三番(思考の人間)となるが、彼ら
には内的統一と意思が欠如しているという共通点がある。
 これらのセンターが適正に能力を発揮し、センター間で調和のとれた発展がなされた
ならば、3Fに象徴を言語とする高次の知性センター、2Fに神話を言語とする高次の感
情センターをつくりだすことができる。
(3)さらにグルジェフは、人間の意識状態を分類し、睡眠、通常の覚醒状態、自己意
識、客観意識に分類する。高次の意識状態である客観意識に達することは、<至高体
験>であるが、これに到達すること、この状態を維持することは難しい。グルジェフによ
ると、通常の人間は、(a)注意力を外界に向け、内面状態への意識がないこと、(b)嘘
(たとえば知識だけで理解にまで至っていないなど)、(c)無用のおしゃべりによって、低
次の意識状態に繋ぎ止められ、覚醒に至らないという。(このあたりの議論は、ハイデッ
ガーにも通じる議論だと思う。)
(4)グルジェフは、『ベルゼブブの孫への話』の中で、低次の意識状態から覚醒しない人
間をSF仕立てで説明している。つまり現実を混乱して捉え、外的印象を楽しさや喜びの
素になる情報になる特殊器官(クンダバッファー)を植えつけられていた記憶があり、現
在はそれが除去されているにもかかわらず、それが植えつけられているかのように習慣
づけられているのである、と。
(4)グルジェフは、後天的に獲得される<人格>の影に、その個人に固有の先天的な
<本質>があるといい、この<本質>が各人の個体性に発現してゆくと考える。
(5)より高次の意識状態にチューニングを合わせるための手段として、過去のさまざま
な宗教や伝統が行ってきた修行法を分類すると、(a)ファキールの道(体をねじる姿勢を
維持したり、過酷な訓練に耐える修行)、(b)修行僧の道(宗教的な自己犠牲と信仰によ
って帰依する道)、(c)ヨーギの道(知の道)がある。人間第一番はファキールの道に引
き寄せられやすく、人間第二番は修行僧の道に引き寄せられやすい。そして、人間第三
番はヨーギの道に引き寄せられやすい。
これらに対し、グルジェフは世間にありながら、世間に属しない第四の道があるといい、
グルジェフ・ワークがそれであるという。グルジェフ・ワークは、現在の生活状況を変える
ことなく(家庭や職業から世捨て人になることなく)、目的を達成しようとする。また、第四
の道は、<食物工場>の1Fから3Fすべてに働きかけるという特徴がある。第四の道で
は信仰はまったく不要であり、むしろ納得するまで何もしてはならない。
(6)グルジェフは、人間を(a)肉体、(b)アストラル体(ケスジャン体)、(c)メンタル体(ス
ピリチュアル体)、(d)デヴァイン体(原因体)からなるとし、これらを調和的に発達させる
ことが必要であると説く。
(7)グルジェフ・ワークは、受動的な<人間機械>にショックを与え、クンダバッファーの
影響力を無効にし、エネルギーの漏出をセーブし、<本質>に対する<人格>の干渉
を弱め、高次の諸体を調和的に発展させようとする。第一のワークは、自己観察と自己
想起ということであり、「汝自身を知れ」ということである。第二のワークは、他者と自覚
的に関係を持ち、ともに生きることである。第三のワークは、ワークの理念のためになさ
れる無私の奉仕である。
(8)グルジェフは、ワークのためにリズム体操的なムーヴメンツと舞踏、さまざまなエク
セサイズを導入する。グルジェフは、普通の人間は<機械>であり、その動作のすべて
が自動的に起こり、無意識的なものである。グルジェフは、舞踏の最中に<ストップ>を
入れる。すると行者は瞬時にその動きを停止させなければならない。この<ストップ>
は、スーフィーに由来する行法であり、習慣によって新たに<機械>がつくられるのを阻
止するためのショックである。
 また、グルジェフは、ワークとして肉体労働を行わせた。グルジェフによると、通常の仕
事は<小蓄積器>からのエネルギーで十分だが、自己修練や内的成長のためには<
大蓄積器>のエネルギーが必要で、これは疲労の極を越えるまで肉体労働を続けた果
てに、あふれ出てくる生命のエネルギーのことである。
(ただし、<ストップ>も、限界を超えた肉体労働も、生命に対する危険性を伴う行法で
あるため、注意が必要である。)
(9)グルジェフの宇宙論においては、創造的中心からの段階的流出という基本概念が
存在する。絶対的初源から、創造の光が流出し、全宇宙が形作られる。このとき<三の
法則>が働く。絶対的初源から生み出された全宇宙は三つの法則に支配されており、
全宇宙から派生した銀河系は六つの法則に支配されている。さらに銀河系から派生した
太陽は12の法則の支配下にある。このように、支配する法則の数が順次、倍になり、
最後の月では96の法則の支配下にあるとされる。
<三の法則>は、すべての現象には能動的・受動的・中和的の三原理が働くというもの
である。
グルジェフは、諸現象の継起に関して、もうひとつの原理<七の法則>が成り立つとい
う。ドレミを例にとると、ドとレとミは等しいインターヴァルであるが、ミとファの間は半音で
ある。また、ソとラとシはインターヴァルが全音であるが、シとドの間は半音である。
絶対的初源からの創造の光においても、絶対的初源と全宇宙、全惑星と地球の間で不
連続が生じるという。
<七の法則>は<ショックの法則>であり、ミとファの間に第一のショック、シとドの間に
第二のショックが与えられないと、次の過程が進行しないようになっているという。
<三の法則>と<七の法則>を統合し、図表にまとめたものがエニアグラムである。


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BGM 【アタシの鞭】
Performance by  Sion Sagiri