実存主義と不条理の思想/サルトル、ボーヴォワール、カミュ

1970年ルノー工場前にて。ドラ
ム缶の上で、アラン・ジャスマー
ルの解放を求めて演説するサ
ルトル
1971年ごろのサルトル
1970年警察の護送車の中でのサルトルとボーヴォワール

     

サルトル全集(人文書院)
第一巻 自由への道 第一部 分別ざかり<小説>
第二巻 自由への道 第二部 猶予<小説>
第三巻 自由への道 第三部 魂の中の死<小説>
第四巻 自由への道 第四部 補遺 最後の機会(断片)<小説>
第五巻 短編集 壁<小説> (→『水いらず』新潮文庫)
  水いらず、壁、部屋、エロストラート、一指導者の幼年時代
第六巻 嘔吐<小説>
 アントワーヌ・ロカンタンの眼の前で明らかになってゆく存在の裸形。公園のマロニエの木
は、本質を剥奪され、次第に存在自体に変貌する。即自存在への嘔吐感と、存在しないもの
を存在させる美という脱出口を探る。
第七巻 汚れた手<劇作>
  汚れた手、墓場なき死者
第八巻 恭々しき娼婦<劇作>
  蠅、出口なし、恭々しき娼婦
第九巻 シチュアシオン II 文学とは何か<評論集> 
 文学とは何か、創刊の辞、文学の国営
第十巻 シチュアシオン III <評論集>
 沈黙の共和国、占領下のパリ、協力者とは何か、大戦の終末、アメリカの個人主義と画一主義、アメリカの町々、
植民地都市ニューヨーク、アメリカ紹介、唯物論と革命、黒いオルフェ、絶対の探求、カルダーのモビル  
第十一巻 シチュアシオン I <評論集> 
 フォークナーの『サートリス』、ジョン・ドス・パトス論、ポール・ニザン著『陰謀』、フッサールの現象学の根本問題、フ
ランソワ・モーリアック氏と自由、ナボコフ『誤解』、ルージュモン『愛と西欧』、フォークナーにおける時間性、ジロドゥ
ー氏とアリストテレス哲学、『異邦人』解説、アミナダブ、新しい神秘家、往きと復り、人間と事物、縛られた人間、デ
カルトの自由
第十二巻 想像力の問題〜現象学的心理学<哲学>
第十三巻 実存主義とは何か〜実存主義はヒューマニズムである<哲学>
 「実存主義はヒューマニズムであるか」というタイトルで行われた講演の記録であり、原題は
『実存主義はヒューマニズム(人間中心主義)である』となっている。実存主義はジャーナリズム
の造語であったが、実存主義者としてのレッテル(対他存在)をサルトルは引き受けようとす
る。そして、本質が存在に先立つペーパーナイフと異なり、われわれは自由であるとし、各人が
責任を持って未来の自分のあり方を選択せよと呼びかける。この『実存主義はヒューマニズム
(人間中心主義)である』に対するハイデッガーの反応は『ヒューマニズムについて(原題:ヒュ
ーマニズムを超えて)』である。
第十四巻 狂気と天才〜キーン<劇作>
第十五巻 悪魔と神<劇作> (→『悪魔と神』新潮文庫)
第十六巻 ボードレール<作家論>
 サルトル初期の作家論。
第十七巻 ネクラソフ<劇作>
第十八巻 存在と無〜現象学的存在論の試み 第1部<哲学>
第十九巻 存在と無〜現象学的存在論の試み 第2部<哲学>
第二十巻 存在と無〜現象学的存在論の試み 第3部<哲学>
 サルトルの主著。マルティン・ハイデッガーの『存在と時間』を導入し、モーリス・メルロ=ポン
ティの『行動の構造』『知覚の現象学』とともにフランス実存主義の理論的基礎を築く。サルトル
の実存(対自存在)は、ハイデッガーのように存在者の根拠となる<存在>がなく、理由もなく
偶然に状況に投げ込まれて存在する無根拠な存在者である。実存(対自存在)は、本質に先
立つため、投企によって自己を創出できる自由な存在者である。これは、もの(即自存在)とは
異なる点である。実存(対自存在)は、対他存在という疎外態となる可能性があるが、無からの
存在者である実存(対自存在)にサルトルは限界を認めず、自由への道を探求する。
 ジル・ドゥルーズは、サルトルは哲学の外であり、自由な風であったとし、その対他存在の分
析は現在の観点からも有効であると『ドゥルーズの思想(原題:対話)』(クレール・バルネとの
共著)の中で述べている。
第二十一巻 シナリオ 賭けはなされた<劇作>
 賭けはなされた、歯車を収録。
第二十二巻 シチュアシオン VI マルクス主義の問題1<評論集>
 冒険家の肖像、チトー主義論、今の世はデモクラシーなのか、『希望の終り』序文、共産主義者と平和
第二十三巻 哲学論文集<哲学>
 想像力、自我の超越、情緒論粗描
第二十四巻 アルトナの幽閉者<劇作>
第二十五巻 方法の問題〜弁証法的理性批判序説<哲学>
 『弁証法的理性批判』の序説にあたる。サルトルは、マルクス主義を現代の乗り越え不可能
な哲学であるとして評価するとともに、現代のそれはスターリン主義という形で動脈硬化を起こ
しているとする。そして自身の実存主義を、マルクス主義に組み込むことで、この動脈硬化を
改善しようとする。
第二十六巻 弁証法的理性批判 I<哲学>
第二十七巻 弁証法的理性批判 II<哲学>
第二十八巻 弁証法的理性批判 III<哲学>
 後期サルトルの主著。マルクス主義と実存主義を綜合し、主体主義的なマルクス主義を創出
しようとする。サルトルは歴史はわれわれの手でつくるものであることを強調し、スターリン主義
や官僚制といった現代の閉塞状況を「実践惰性態」と看做す。しかし、「実践惰性態」しての構
造もまた、人間の作り出した結果である以上、これを集団のプラクシス(実践作用)によって打
ち破ることが可能であるとする。
 構造をわれわれの意のままに改変できるとするサルトルの主張は、レヴィ=ストロースの『野
生の思考(パンセ・ソヴァージュ)』によって批判され、構造主義へと思想潮流が変わった。
第二十九巻 言葉<自伝>
第三十巻 シチュアシオンIV 肖像集<評論集>
 見知らぬ男の肖像、芸術家と彼の意識、ねずみと人間、生きているジード、アルベール・カミュに答える、アルベー
ル・カミュ、メルロー・ポンチ、ヴェネツィアの幽閉者、ジャコメッティの絵画、マッソン、指と指ならざるもの、カプチン修
道女の土間、ヴェネツィアわが窓から
第三十一巻 シチュアシオンV 植民地問題<評論集>
 一つの中国からもうひとつの中国へ、植民地主義は一つの体制である、『植民者の肖像と被植民者の肖像』につ
いて、「みなさんは素晴らしい」、「われわれはみな人殺しだ」、一つの勝利、「志願者」、侮蔑の憲法、王様をほしが
る蛙たち、人民投票の分析、夢遊病者、『飢えたる者』、パトリス・ルムンバの政治思想
第三十二巻 シチュアシオンVII マルクス主義の問題2<評論集>
 ルフォールに答える、<カナパ>作戦、改良主義と物神、ピエール・ナヴィルへの回答、スターリンの亡霊、警察が芝
居の幕をあける時…、文化の非武装化、『イヴァンの少年時代』
第三十三巻 トロイアの女たち<劇作>
第三十四巻 聖ジュネ〜演技者と殉教者I<作家論>(→『聖ジュネ』(上)新潮文庫)
第三十五巻 聖ジュネ〜演技者と殉教者II<作家論>(→『聖ジュネ』(下)新潮文庫)
 サルトル中期の作家論。泥棒作家ジャン=ジュネの生涯を、対他存在から次第に自由を獲
得してゆく過程として解剖し尽くそうとする。
第三十六巻 シチュアシオンVIII<評論集>
第三十七巻 シチュアシオンIX<評論集>
第三十八巻 シチュアシオンX<評論集>

・その他のサルトルの作品
『家の馬鹿息子(ギュスターヴ・フロベール論)』(人文書院)<作家論>
 サルトル後期の作家論。実存主義、マルクス主義、精神分析、ありとあらゆる方法を酷使し
て、フロベールのすべてを解明尽くそうとする怪物的大著。
『マラルメ論』(ちくま学芸文庫)<作家論>
『反逆は正しい〜自由についての討論』I・II(人文書院・対談集・全二巻)<哲学>
『サルトル〜自身を語る』(人文書院)<自伝>
『知識人の擁護』(人文書院)<哲学>
『サルトル対談集』I・II(人文書院)<哲学>
『ユダヤ人』(岩波新書)<哲学>
『革命か反抗か〜カミュ・サルトル論争』(新潮文庫)<哲学>
『マルクス主義と実存主義〜弁証法についての討論』(人文書院)<哲学>
『反戦の原理〜アンリ・マルタン事件の記録』(弘文堂)<哲学>
『文学は何が出来るか』(河出書房新社)<哲学>
「普遍的単独者」(『生けるキルケゴール』に収録)(人文書院)<哲学>
『否認の思想〜1968年5月のフランスと8月のチェコ』<哲学>(人文書院)
『マルクス主義論争(サルトル、ルフォール論争)』(ダヴィッド社)<哲学>など多数




ボーヴォワール著作集(人文書院)


1 招かれた女 (→『招かれた女』新潮文庫)
2 ピリウスとシネアス、両義性のモラルについて (→『人間について』新潮文庫)
3 他人の血  (→『他人の血』新潮文庫)
4 人はすべて死ぬ (→『人はすべて死す』岩波文庫)
5 アメリカその日その日
6 第二の性 ※  (→『第二の性』新潮文庫)
7 第二の性 ※※
 「女は女に生まれない。女になるのだ。」実存主義的フェミニズムの立場から、女性は初めか
ら女性であるのではなく、文化的・政治的・社会的に女性らしさという本質を身につけるように
強制されているだけであるとし、主体的な生き方を探求する。
8 レ・マンダラン ※
9 レ・マンダラン ※※
10 美しき幻影

・その他のボーヴォワールの作品
『娘時代』(人文書院)
『女ざかり』(人文書院)
『ある戦後』(人文書院)
『決算の時』(人文書院)
『老い』(人文書院)
『別れの儀式』(人文書院)
『ボーヴォワール〜自身を語る』など多数


カミュ全集(新潮社)
 カミュの作品は、大きく分けて二つに分類できる。
(1)不条理の系列…『異邦人』、『シーシュポスの神話』、『カリギュラ・誤解』
(2)反抗の系列…『ペスト』、『反抗的人間』、『正義の人びと』
前者の不条理の系列では、個人的な美徳(キリスト教の教えにかなった生活をする)よりも、個
人の生の悦びを享受することが重視され、自殺が否定される。
カミュにおいては、不条理と向き合う緊張関係の持続が、生の感覚的享受に繋がるとして重視
されるため、不条理からの超越を図る実存主義の方向性とは異なる傾向を持っている。
後者の反抗の系列においては、集団的な美徳(歴史主義的な使命に従う)よりも、いかなる理
由であれ殺人を正当化することを拒否することが大切であるとされる。連帯性が強調され、「我
反抗す、ゆえにわれらあり」となる。カミュは、人間主義の立場から<犠牲者も否、死刑執行人
も否>を貫いた。「反抗的人間は原則的に死に反対する」のである。
反抗に関しては、マルクス主義に接近したサルトルとの論争を引き起こした。




第一巻 キリスト教形而上学とネオプラトニズム/アストゥリアスの反乱/裏と表/結婚
/地中海に寄せる詩/世界をのぞむ家
第二巻 異邦人(→新潮文庫)/シーシュポスの神話(→新潮文庫)/選ばれた者の肖
像/理知と断頭台/無意味について/ペストのなかの追放者たち
第三巻 カリギュラ(→『カリギュラ・誤解』新潮文庫)/誤解(→『カリギュラ・誤解』新潮
文庫)/ドイツ人の友への手紙/反抗に関する考察/ニューヨークの雨/国際政治へ
の考察/選択の迷い/知性の擁護/自由の証人
第四巻 ペスト(→新潮文庫)
第五巻 戒厳令/正義の人びと/アンドレ・ジッドとの出合い/正義と憎悪/日本の作
家への手紙/パリの沈黙
第六巻 反抗的人間
第七巻 十字架への献身/精霊たち/夏/ハーマン・メルヴィル/牢獄の芸術家/創
造と自由/コルドの魅力
第八巻 ある臨床例/転落(→『転落・追放と王国』新潮文庫)/砂漠について/ロジェ・
マルタン・デュ・ガール/テロリズムと弾圧
第九巻 オルメドの騎士/尼僧への鎮魂歌/スウェーデンでの受賞演説/ギロチン/
アルジェリアの記録
第十巻 追放と王国(→『転落・追放と王国』新潮文庫)/悪霊/ルネ・シャール/われ
らの友ロブレス/アルジェリアの友への手紙

・その他のカミュの作品
『最初の人間』(新潮社)
『革命か反抗か』(新潮文庫・サルトルおよびジャンソンとの論争記録)
『幸福な死』(新潮文庫)
『直観』(新潮社)
『アメリカ・南米紀行』(新潮社)
『手帖[全]』(新潮社)
『カミュ=グルニエ往復書簡集』(国文社)
『太陽の讃歌〜カミュの手帖(1)』(新潮文庫・絶版)
『反抗の論理〜カミュの手帖(2)』(新潮文庫・絶版)
『ギロチン』(紀伊國屋書店・絶版)
『不条理と反抗』(人文書院)
『スウェーデンの演説』(木内孝訳・神無書房・絶版)
『自由の証人』(新潮社・絶版)
『アクチュアル[時事論集] II』(新潮社・絶版)など多数






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BGM 【InnerShade】
Performance by Sion Sagiri